契約不適合責任を想定した契約書のポイント
契約不適合責任が問題になるのはどんな場合でしょうか?
基本的に、契約不適合責任のルールが想定しているのは売買契約です。
たとえば、買主が住む想定で建物売買契約した場合、売主が買主に引き渡した建物について、柱が腐敗していて今にも崩壊しそうな状況であったなどの場合、柱の修理を請求したり、その分の代金を減額してもらったりするのが契約不適合責任です。
また、事業者が関わることが多い請負契約は、有償契約であり、契約不適合責任が生じ得ます。
工事やWeb制作・システム制作など、請負人が注文者に対して一定の仕事を完成させる内容の契約があたります。
請負契約は、自宅の窓を修理してもらうような場合など、目的物を最終的に引き渡すわけではない場合もあり、引き渡しを要しない請負契約においては、仕事が終了したときの仕事の目的物に契約不適合があった場合に契約不適合責任が生じることになります。
しかし、たとえば注文者が「この材料で修理してください」と指定をして注文をしたときに、その材料が原因で契約不適合が生じた場合には、注文者は契約不適合責任を追及できないので注意が必要です。
そのほか、売主・買主の立場で、契約書上にポイントがあります。
売主の立場で注意すること
改正前では売主は、「隠れた瑕疵」について責任を負うとされ、買主が知っていた瑕疵については「隠れた瑕疵」にあたらないとされていました。
しかし、改正後は、買主が知っていた不備についても「契約不適合責任」の対象になり得ます。
そのため、特に中古品や不動産の売買で、一定の不備があることを買主も承知で売買するようなケースでは、
売主として、買主が知っていた不備については責任を負わないことを契約書で明記することを考慮する必要がなります。
買主の立場で注意すること
改正により、「売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる」とされました。(改正民法562条1項但書)
※「追完」とは、商品や工事に不備があった場合にそれをなおしたり、不備のない商品と交換することです。
この規定は、不備についての修理や代替品の納入について、売主が買主の指定した方法に従わなくても買主は許容しなければならないことを意味しており、買主にとって不利になる場合がある規定です。
そのため、自社が買主側あるいは発注者側として契約書を作成するときは、「民法562条1項但書」は適用しないことを契約書に明記しておくという対応も考慮する必要があります。
さらに、この民法562条1項但書の規定は、民法559条により、請負や準委任にも準用されており、
システム開発やWeb開発、コンテンツ制作などを発注した場合に完成物に不備があったとしても、請負人は、必ずしも、発注者が指定する方法で不備をなおす義務を負わないということになります。
自社が発注者側としてシステム開発などの契約書を作成するときは、
この「民法559条が準用する民法562条1項但書」は適用しないことを契約書に明記しておくという対応が考えられます。
とはいえ、実務上は、「民法562条1項但書については、両当事者の協議によって定める」というようになると思います。
売主、買主それぞれに予防的な契約条項に特徴があり、契約書をよく読んで契約しなくてはなりません。
契約不適合責任の期間について制限はあるのでしょうか?
次回は期間について見てみましょう。
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