システム保守契約の必要性について考える
システム保守契約は、ユーザが、ベンダに対してシステムの保守に関する業務を委託する際に締結する契約です。
システム保守は、システム使用開始後に、継続的に問題なく使用できるようにするものという共通認識はあるものの、保守業務内容は、システムの特性やユーザ・ベンダの役割分担や関与度合いによりいろいろです。
一般的には、ベンダが、システムの不具合修補やバージョンアップ、システム使用に関する問い合わせ対応等の業務となります。
システムの不具合修補、不具合ではないシステムの改修・更新、問合せ対応に分けて考えてみます。
システム不具合修補の視点
ユーザがシステム不具合修補を求める場合、契約不適合責任を問える可能性があります。しかし、開発委託時の契約や取り決めに従った扱いになるため、当然にできるわけではありません。(ベンダとの協議が発生)
そのうえ、契約不適合責任の存続期間(不適合を知った時から1年以内)や開発委託契約の期間(引渡しや検収完了からの一定期間)は、十分長いとは言えず、不具合発覚ごとに契約締結して修補を委託しなければならず、すぐに不具合が修正されず、相当の期間、システム業務に支障をきたすことになります。
保守契約を締結しておけば、契約手続きなしに、すぐに修補を請求でき、応急対応含め、業務支障を解消することが可能です。(この応急対応含むベンダの修補対応があることが非常に大きいです)
また、保守料金は、月額、年額等の固定の基本料金が設定される場合が多く、ユーザによっては、不具合がなければ、保守費が無駄になると思われるかもしれません。しかし、修補請求の期間制限がなく、修補費用の予測がしやすいため、ユーザメリットは大きいと思われます。
(固定料金ではなく、ユーザが一定数の業務件数や対応工数分のチケットを購入し、実際の保守対応に従って消費するチケット制のような料金体系を設定する場合もあります。)
不具合ではないシステム改修・更新の視点
システム使用開始には、問題なく稼働していたものでも、使用環境や使用態様の変化に対応し、システム改修・更新が必要になります。
使用環境の変化としては、OSやハードウェアのアップデートがあります。使用態様の変化としては、ユーザの業務要件の変更などの内部環境の変化や、消費税率変更などの法令改正などの外部環境の変化があります。
上記のような使用環境や使用態様が変化した場合の改修・更新は、不具合修補として請求することはできませんので、保守契約の対象業務に上記の改修・更新対応を含めることが考えられます。
とはいえ、上記の改修・更新は、環境の変化によりその範囲や規模は際限なく拡大するため、保守契約にあらゆる改修・更新を実施するという内容は現実的ではなく、極めて限られた内容かつ、一定の工数内で対応できる範囲に限定すべきです。
ベンダにとっては、不具合ではないシステムの改修・更新を保守内容に含めることは、まずありませんので、例えば、毎年の人事・組織異動に伴うマスタデータの洗い替えや、ハードウェアの更新(使用開始時と同じ要件のもの)など、具体的かつ限定的な内容にしておかなければなりません。
問合せ対応の視点
システム納品の際、マニュアル等のドキュメントを提供することが、一般的ですが、マニュアルだけではユーザが対応できない場合に、システムの使用方法、設定方法についての問い合わせ対応を保守内容とすることが多いです。
問合せ対応をベンダの義務として定め、その条件を明確にしておくことが、ユーザ・ベンダにとって有益です。
ただし、その対応については、問合せするユーザの部門・数・方法(電話・メール)、対応するベンダの応答時間・方法など予め定義しておくことが必要です。
決めておかないと、ユーザにとっては、想定上の保守費用が発生、ベンダにとっては想定以上の対応を強いられるなどが起こる可能性があります。
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