クラウドサービス利用規約の特徴
ネットワークを通じて、情報処理サービスを必要に応じて提供・利用するサービスとして、ユーザに提供されるクラウドサービスには、様々なものがあります。
代表例としては、GmailやDropBox、AWS(Amazon Web Service)などがあります。
ユーザは、サービス提供者が用意したサービスを即日、安価に利用でき、サーバなどのコンピュータ資産を保有することなく、最新の技術・サービスを利用できることがメリットです。
クラウドサービスにおいて、障害、機能不全等によって、ユーザに損害が生じた場合のサービス提供者の責任や、データの保全、消失時の責任等の問題があります。さらに、通信技術や通信網の利用による国境を越えたサービス、複数事業者によるサービスの場合も問題もあります。
そこで、クラウドサービス利用契約について、サービス提供者の視点から、いくつかの観点で考えてみたいと思います。
法的観点から
クラウドサービス利用契約において、サービス提供者は、サービスの提供、システム運営・管理について、高度の注意義務を負うと思われる一方、安価に幅広くサービス提供するため、注意義務が高くなりすぎると、クラウドサービス事業の発展を妨げる可能性があると思われます。
また、クラウドサービスが提供するソフトウェアは、ユーザによる複製等の著作物の利用行為が発生しないのが原則で、著作物ライセンスを伴いません。しかし、スマホやPCにアプリとしてインストールするものもあり、その場合は、ソフトウェアライセンス契約の意味合いもあります。
契約締結プロセスの観点から
画一的なサービスを安価に提供するため、サービス提供者とユーザとの契約は、サービス提供者が事前に用意した定型フォームの定型約款(契約条項)が適用されることが多く、ユーザには交渉の機会はありません。
また、インターネット上でクリック操作することで契約が完結する場合が多いと思われます。
(ソフトウェアライセンス契約の成立について もご参照ください)
サービスレベル(SLA)の観点から
クラウドサービスは、その品質や性能について、ユーザとの認識に不一致が生じることが多いと思われます。
例えば、サービス提供者が、「不正アクセスに対して堅牢なシステム」と謳っていても、あらゆるサイバー等攻撃を防ぐことを保守する意図は、通常ありません。しかし、ユーザは、そういう謳い文句を信頼し、不正アクセスが生じれば直ちに、サービス提供者に責任を問えると考えるのは無理もありません。
こういう認識齟齬によるトラブル防止や円滑な解決に向けてSLA(サービスレベルアグリメント)が用意されています。
SLAには、セキュリティ(ウィルス対策、FW)/保守(ハードウェア障害対応、ソフトウェア障害対応)/ネットワーク(回線障害、帯域/サポートデスク等が、カテゴリ別に内容と対応レベル(通知時間、復旧時間等)が定められます。
注目すべきなのは、その内容、対応レベルの水準に達しなかった場合の効果です。
例えば、某サービスでは、月間の使用可能時間割合が99.0%以上99.9%未満だった場合、利用者が支払った料金の10%が、95.0%以上99.0%未満だった場合は25%が、95.0%未満だった場合は全額が払い戻されるように規定されています。
なお、契約にSLAが取り込まれていることに、契約締結時にユーザが同意することによって、契約にSLAが組み入れられますが、サービス提供者が一方的にサービスの限界を定め、そのSLAの基準さえクリアしていれば、サービス提供者が免責されるという期待はできないと思われます。
次回は、クラウドサービス利用規約を締結する際の留意点を考えてみたいと思います。
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