JV(ジョイントベンチャー)の施工体制で注意する点

ジョイントベンチャー(JV)の工事現場における監理技術者等の配置は、甲型JV(共同施工方式)と乙型JV(分担施工方式)のどちらであるかと下請代金額によって異なります。
また、実績や施工体制台帳等の管理についても、注意する必要があります。

配置技術者の注意点

甲型JV(共同施工方式)

JVの形態として、比較的多い『甲型JV』は、『全構成員が、各々あらかじめ定めた出資割合に応じて、資金・人員・機械等を拠出して、一体となって工事を施工する方式』です。

下請代金の総額が5,000万円未満の場合

①全ての構成員が主任技術者を配置しなければなりません
◆ 共同企業体運用準則では、JV工事の主任技術者は国家資格を有する者とすべき旨と規定されています

②発注者から請け負った建設工事の額が、4,500万円(建築一式の場合は9,000万円)以上の場合は、全ての主任技術者が当該工事に専任

下請代金の総額が5,000万円以上の場合

①構成員のうち1社(通常、代表者)が監理技術者、ほかの構成員が主任技術者を配置
◆ 共同企業体運用準則では、JV工事の主任技術者は国家資格を有する者とすべき旨と規定されています

②監理技術者及び主任技術者は当該工事に専任

乙型JV(分担施工方式)

『乙型JV(分担施工方式)』は、『○各構成員間でJVで請け負った工事をあらかじめ工区に分割して、各構成員はそれぞれが担当する工区の工事を責任を持って施工する方式』です。

分担工事に係る下請代金の総額が5,000万円未満の場合

①全ての構成員が主任技術者を配置
◆ 共同企業体運用準則では、JV工事の主任技術者は国家資格を有する者とすべき旨と規定されています

②分担施工に係る請負代金の額が、4,500万円(建築一式の場合は9,000万円)以上の
場合は、当該主任技術者は当該工事に専任

分担工事に係る下請代金の総額が5,000万円以上の場合

①分担工事に係る下請代金の総額が、5,000万円以上となった建設業者は監理技術者を、その他の
建設業者は主任技術者を配置

②分担施工に係る請負代金の額が、4,500万円(建築一式の場合は9,000万円)以上の場合は、当該監理技術者及び主任技術者は当該工事に専任

上記各図は、建設工事の適正な施工を確保するための建設業法 (令和7.2版)
(国土交通省 関東地方整備局 建政部 建設産業第一課)から引用

完成工事高について

工事請負契約の基づく工事の収益である完成工事高は、甲型JVと乙型JVで異なります。

甲型JVの場合は、工事請負代金に各構成員の出資比率を乗じた額となります。
乙型JVの場合は、そのJVの運営委員会で定めた各構成員の分担工事の額となります。

施工体制台帳等について

JVは、民法上の組合と位置付けられ、法人格を持ちません。
そのため、施工体制台帳等は、JVの各構成員が整備しなければなりません。

甲型JVの場合は、通常は、代表者が施工体制台帳等の整備を行います。
乙型JVの場合は、通常は、分担工区を担当する各構成員が、施工体制台帳等を整備します。

下請となる場合に関して

JVの構成員である企業が下請業者となる場合、その企業は下請契約の双方の当事者となります。
この場合が、直ちに法令違反となるわけではありませんが、施工前に対応すべきことがあります。

上記の企業が出資比率に比べて施工の多くを行うことになる場合や、他の構成員が実質的な施工を行わず出資比率に応じた利益をえる(ペーパーJV)場合などは、共同企業体(JV)の趣旨に反します。
そのため、一部の構成員の担当範囲が大きくなることが予想される場合は、出資比率を実際の施工規模に応じて変更する必要があります。

また、JVは発注者から直接工事を請負う元請としての共同企業体を想定したもののため、「JV自体が下請事業者となる」についても、共同企業体(JV)の趣旨に反します。そのため、施工技術上の必然性がある場合などに合理的な理由がない限り、「JV自体が下請事業者となる」ことは避けた方がよいです。

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行政書士 尾﨑
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