次の「事業再構築補助金」はこう変わる

令和4年度第二次補正予算では、「事業再構築補助金」がどのように変わるのか、概要をまとめてみました。

次回の第10回公募からの内容で、具体的な公募要領は、3月下旬に発表予定です

令和4年度第二次補正予算「事業再構築補助金」の全体像はこんな感じ

令和4年度第二次補正予算「事業再構築補助金」の全体像
中小企業の新分野展開を引き続き支援

長引く新型コロナウイルス感染症の影響に加え、物価高騰等により、事業環境が厳しさを増す中、中小企業等が行う、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応した、感染症等の危機に強い事業へに大胆な事業再構築の取組を支援することで、中小企業等の付加価値額向上や賃上げにつなげるとともに、日本経済の構造転換を促すことを目的としています

令和4年度第二次補正予算「事業再構築補助金」の概要

①成長枠の創設、グリーン成長枠の要件緩和及び上乗せ支援の創設
成長分野に向けた大胆な事業再構築に取り組む事業者に向け、売上高減少要件を撤廃した成長枠を創設
グリーン成長枠については、要件を緩和した類型(エントリー)を新設し、使い勝手が向上
また、これらの枠で申請する事業者の中で、中堅・大企業へ成長する事業者や大規模な賃金引上げ等を行う事業者に対し、補助金額や補助率を上乗せ
②産業構造転換枠の創設
国内市場の縮小等の産業構造の変化等により、事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者に対し、補助率引上げ等により、重点的に支援
③サプライチェーン強靭化枠の創設
海外で製造する部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靭化及び地域産業の活性化に資する取組を行い事業者を支援
④物価高騰対策・回復再生応援枠の創設
新型コロナの影響に加え、物価高騰等ににより業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者の事業再構築を引き続き支援するため、補助率を引き上げた特別枠を創設
⑤最低賃金額枠の継続
最低賃金引き上げの影響を大きく受ける事業者の事業再構築を引き続き支援

事業再構築補助金の見直し・拡充

成長枠の創設 ※見直し

●成長分野に向けた大胆な事業再構築に取り組む事業者に対する支援
●必須要件を見直し、売上高減少要件を撤廃

必須要件(全枠共通)

A:事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組むこと
B:補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上増加又は
 従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上増加すること

対象となる事業者

必須要件(Bについては、付加価値額の年率平均4.0%以上増加を求める)に加え、以下の要件をいずれも満たすこと
①取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること
 (業種・業態は、公募開始時に発表されます)
②事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること

補助上限額・補助率

グリーン成長枠の拡充 ※見直し

●グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者への支援を継続されます
●要件を緩和した類型(エントリー)を創設し、使い勝手を向上されます

対象となる事業者

<現行>
①補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均5.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均5.0%以上増加の達成を見込む事業計画を策定すること
②グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組であり、2年以上の研究開発・技術開発、又は、従業員の10%以上が年間20時間以上の人材育成をあわせて行うこと

<今後>必須要件に加え、以下の要件を満たすこと
【エントリー】(必須要件Bについては、付加価値額の年率平均4.0%以上増加が必要)
①グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組として記載があるものに該当し、
 その取組に関連する1年以上の研究開発・技術開発、又は、
 従業員の5%以上に対する年間20時間以上の人材育成をあわせて行うこと
②事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること
【スタンダード】(必須要件Bについては、付加価値額の年率平均5.0%以上増加が必要)
①グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組として記載があるものに該当し、
 その取組に関連する2年以上の研究開発・技術開発、又は、
 従業員の10%以上に対する年間20時間以上の人材育成をあわせて行うこと
②事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること

補助上限額・補助率

大幅賃上げ・規模拡大へのインセンティブ ※新設

●成長枠又はグリーン成長枠に申請する事業者に対し、上乗せ枠として、卒業促進枠大規模賃金引上促進枠を設け、成長・賃上げのインセンティブが付与されます(両上乗せ枠の併用は不可)
●大幅な賃上げを行う場合、成長枠・グリーン成長枠の補助率を引上げられます

卒業促進枠
卒業促進枠の要件

成長枠又はグリーン成長枠の補助事業の終了後、3~5年で中小企業・特定事業者・中堅企業の規模から卒業すること

補助上限額・補助率
大規模賃金引上促進枠
大規模賃金引上促進枠の要件

以下の要件をいずれも満たすこと
①成長枠又はグリーン成長枠の補助事業の終了後3~5年の間に、事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げること
②成長枠又はグリーン成長枠の補助事業の終了後3~5年の間に、従業員数を年率平均1.5%以上増員させること

補助上限額・補助率
成長枠・グリーン成長枠の補助率引上げ

補助事業期間内に、以下をいずれも達成した場合、補助率を2/3(中堅は1/2)に引上げられます
①給与支給総額を年平均6%増加
②事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引上げ
ただし、事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させることが出来なかった場合、差額分(補助率1/6分)の返還が求められます

成長枠・グリーン成長枠・サプライチェーン強靱化枠の加点措置(追加)

成長枠・グリーン成長枠・サプライチェーン強靱化枠に申請し、大幅な賃上げを実施する事業者に対し、加点されます
①事業終了後3~5年で、給与支給総額年率平均3%以上増加
②事業終了後3~5年で、給与支給総額年率平均4%以上増加
③事業終了後3~5年で、給与支給総額年率平均5%以上増加

産業構造転換枠の創設 ※新設

●国内市場の縮小等の産業構造の変化等により、事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者に対し、
 補助率を引き上げる等により、重点的に支援されます
●対象経費に廃業費を追加し、廃業費がある場合は補助上限額を上乗せされます

対象となる事業者

必須要件(Bについては、付加価値額の年率平均3.0%以上増加が必要)に加え、以下のいずれかを満たすこと
①過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属していること
②地域における基幹大企業が撤退することにより、市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域に属しており、当該基幹大企業との直接取引額が売上高の10%以上を占めること

補助上限額・補助率

サプライチェーン強靱化枠の創設 ※新設

海外で製造する部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に取り組む事業者を対象として「サプライチェーン強靱化枠」を新設し、補助上限額を最大5億円まで引き上げて支援されます

サプライチェーン強靱化枠の対象となる事業者

必須要件(Bについては付加価値額の年率平均5.0%以上増加が必要)に加え、以下の要件を満たす、生産拠点を国内回帰する事業(公募開始時に発表)であること
①取引先から国内での生産(増産)要請があること(事業完了後、具体的な商談が進む予定があるもの)
②取り組む事業が過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態(公募開始時に発表)に属していること
③下記の要件をいずれも満たしていること
 ・経済産業省が公開するDX推進指標を活用して自己診断を実施し、結果を独立行政法人情報処理推進機構IPAに対して提出していること
 ・IPAが実施する「SECURITY ACTION」の「★★二つ星」の宣言を行っていること
④下記の要件をいずれも満たしていること
 ・交付決定時点で、設備投資する事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高いこと
  ただし、新規立地の場合は、当該新事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高くなる雇用計画を示すこと
 ・事業終了後、事業年度から3~5年の事業計画期間終了までの間に給与支給総額を年率2%以上増加させる取組であること
⑤「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトにて、宣言を公表していること

補助上限額・補助率

業況が厳しい事業者への支援 ※見直し

●コロナや物価高等により依然として業況が厳しい事業者に対して、支援を継続されます
●第9回公募までの「回復・再生応援枠」と「緊急対策枠」を統合し、新たに「物価高騰対策・回復再生応援枠」として措置されます

物価高騰対策・回復再生応援枠

対象となる事業者

<現行(回復・再生応援枠、緊急対策枠)>
現行の必須要件に加え、以下を満たすこと
(回復再生応援枠)①2021年10月以降のいずれかの月の売上高が対2020年又は2019年同月比で30%以上減少していること
         ②再生支援協議会スキーム等に則り再生計画を策定していること
(緊急対策枠)  ①2022年1月以降の3か月の合計売上高が、2019~2021年と比較して10%以上減少していること

<今後(物価高騰対策・回復再生応援枠)>
必須要件(Bについては、付加価値額の年率平均3.0%以上増加が必要)に加え、以下のいずれかを満たすこと
①2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019~2021年と比較して10%以上減少していること
②中小企業活性化協議会等から支援を受け、再生計画等を策定していること

補助上限額・補助率

最低賃金枠

最低賃金引上げの影響を強く受ける事業者を引き続き強力に支援すべく、最低賃金枠は継続されます

要件(変更なし)

必須要件(Bについては、付加価値額の年率平均3.0%以上増加が必要)に加え、以下を満たすこと
①2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019年~2021年と比較して10%以上減少していること
②2021年10月から2022年8月までの間で、3月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員の10%以上いること

補助上限額・補助率

複数回申請・採択可能な類型が追加

これまでの「グリーン成長枠」に加え、「産業構造転換枠」及び「サプライチェーン強靱化枠」についても、
一定の条件下で過去採択された事業者の再申請・採択が認められます

①グリーン成長枠以外で1度目の採択を受けた事業者
 ⇒グリーン成長枠・産業構造転換枠・サプライチェーン強靱化枠に限り申請可能
②グリーン成長枠で1度目の採択を受けた事業者
 ⇒サプライチェーン強靱化枠に限り申請可能

通常の申請に加えて、以下の2つの資料の提出が必要です。
①既に事業再構築補助金で取り組んでいる事業再構築とは異なる事業再構築であることの説明資料
②既存の事業再構築を行いながら新たに取り組む事業再構築を行うだけの体制や資金力があることの説明資料

補助対象者が拡大されます

社会福祉法人、労働者協同組合(労働者300人以下)も補助対象となります

投稿者プロフィール

行政書士 尾﨑
行政書士 尾﨑

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