経営事項審査の工事経歴書の書き方は、決算変更届とは違います

経営事項審査(経審)を受ける場合に、工事経歴書(以下、工歴と略す)を作成しなければなりません。
新規許可申請や更新、決算変更届でも工歴を提出し、決算変更届の工歴をそのまま経審用に使う方が多いと思いますが、経審で添付する工歴は、決算変更届のものと同じでは要件を満たさない場合があります。
大阪府で経審を受ける場合を例に、経審では、どのように工歴を書けばよいか、その書き方を教えします。

受審可能な業種

受審業種については、審査基準日時点ではなく、経審申請日時点に許可取得している業種を受審申請することができます。
時々、経審受審の数週間前に業種追加申請し、受付されただけで、経審受審の業種に追加したいという問い合わせがありますが、受付ではなく、許可通知が届いていることが必要ですので、ご留意ください。

元請工事の7割、そして、工事全体の7割

前提として、経審を受審する業種について、許可業種ごとに作成します。

まず、元請工事の7割を超えるところまで

元請工事に係る完成工事について、

①元請工事の合計額の7割を超えるまで
②①になる前に
・税込500万円(建築一式は、税込1,500万円)未満の元請工事が10件に達すれば終了
・記載した工事の元請代金合計が、税込1,000億円に達すれば終了

請負代金の額の大きい順に書きます。

次に、全ての完成工事高の約7割を超えるところまで

既に記載した元請工事以外の元請工事と下請工事の完成工事について、

①元請工事と下請工事の全体の合計額の7割を超えるまで
②①になる前に
・税込500万円(建築一式は、税込1,500万円)未満の工事が10件に達すれば終了
・記載した工事の代金合計が、税込1,000億円に達すれば終了

請負代金の額の大きい順に書きます。

代金が大きい順ですので、
元請工事→下請工事→元請工事
下請工事→元請工事→下請工事といった順になる場合があります。
元請工事(元請工事7割に記載したもの以外)と下請工事両方の中で、金額が大きい順に書いてください。

以下は、記載の例です。

請負代金は当期完成工事高を、原則 税抜金額で

請負代金は、当期の完成工事高(消費税抜き)を書きます。未成工事は合算してはいけません。
決算変更届と同じく、免税事業者であった期間は原則消費税込みで構いません。

進行基準の場合

請負金額欄には、上段に 全期分を、下段に 今期分をカッコ書き 2段で書いてください。

例えば、
請負代金全体が75,000千円、うち今期完成分が50,000千円の場合、
代金欄にはこのように書きます。

75,000
(50,000)

なお、工歴の下の合計欄にはは、カッコ内の代金(今期分)の合計を書きます。
この合計金額は、「直前3年の各事業年度における工事施工金額」(元請、元請+下請合計)と合わせます。

注文者、工事名は契約書、請求書に合わせます

決算変更届は、閲覧対象の書類のため、発注者の機密情報や個人情報の保護の観点から、注文者や工事名を、「鈴木様邸」ではなく「S様邸」のように記載することがほとんどだと思います。

しかし、経営事項審査書類は、非閲覧書類で、工事の事実を証明しなければならないため、発注者工事名は、請負契約書や請求書などと一致していなければなりません。
従って、注文者、工事名は、略さず、契約書、請求書の記載に合わせてください。
特に、上位3件分については、同一性を確保してください。

また、大手ゼネコンなどから公共工事を下請で工事した場合に、注文者を「〇〇市」と書いている場合がありますが、それは間違いです。工歴に書く注文者は、自社に直接注文したもので、この場合は、「大手ゼネコン」を注文者に記載します。

公共工事は、工事現場、工期も契約書通りに

元請工事の公共工事の工事現場と工期は、請負契約書と一致させてます。

下記の「請負代金上位3件の契約書等の写し」に関係しますが、公共工事は、金額や工期変更時には、変更契約書(写し)も必要です。

配置技術者もお忘れなく

配置技術者の氏名と、監理技術者・主任技術者のいずれかのチェックを忘れないように

まれに、監理技術者と主任技術者の区分を間違っていたり、専任技術者が工事現場の配置技術者となっている工歴を見かけることがあります。(専任技術者を工事現場に置く場合の許可行政庁の判断基準を満たしているかチェックしておきましょう)

請負代金上位3件の契約書等の写しを添付

工歴に記載の上位3件分の建設工事に係る契約書、注文書、請書などの具体的な工事の内容及び工事の期間のわかる書類の写しが必要です。

この上位3件(5件必要な許可行政庁もあります)は、冒頭の「元請工事の7割、そして、工事全体の7割」に記載した上位3件で、元請工事があれば、その金額が小さくても、少なくとも1件は、元請工事の書類の用意が必要です。

それらの書類によって、建設工事の具体的な内容や期間が不明な場合には、内訳書、設計書、図面などの書類の写しも必要になる場合があります。

この契約書等の写しについても、留意しておかなければならないことがあります。
それについては、別の機会で書こうと思います。

工事実績がない受審業種の工歴

受審する業種について、工事実績がなくても「工事実績なし」と記載して提出しなければなりません。
省略不可です。
尚、工事実績のない業種が複数ある場合は、工事経歴書の左上の「建設工事の種類」に複数の業種を列挙して、
1枚の「工事実績なし」工事経歴書にまとめることが可能です。

前回受審していない業種を受審する場合

前回受審していない業種を、受審する業種に追加する場合、実績がなくても、前期分の工事経歴書を合わせて提出しなければなりません。
経営事項審査の完成工事高を3年平均とする場合は、前々期分の工事経歴書も提出しなければなりません。
尚、前期、前々期分の工事経歴書に記載した上位3件の契約書等の写しは不要です。

建設業に詳しい行政書士に経審を依頼するメリット

これまで読んでいただくとお分かりいただけたと思いますが、経審用の工歴を書くのはそれなりに面倒です。
特に、「元請工事の7割、そして、工事全体の7割」は、建設業を主業務にしていない行政書士でも間違いやすいところです。

とはいえ、建設業のことは社長自身が詳しいから、行政書士の報酬をかけたくないからの理由で、経審を自分でやろうという会社があります。
その場合、行政庁が公開している手引きなどで経理や総務の担当者などが経審手続の知識を得て作成することはできますが、経審は年に1回の手続きで、経審に関する法律や規則は、毎年見直されるため、申請の都度、最新の知識を取得しなければならず、本来業務ではないことに時間を割かなければなりません。
さらに、必要な書類の作成、整理だけではなく、行政庁へ提出する際は、大阪府咲洲府庁までの往復と受付・審査に、ほぼ半日を要してしまいます。

これを会社にとって、有益なノウハウ・スキルと見るか、コストと見るかは、それぞれの会社の考えだと思いますが、行政書士に依頼することで、手続き知識の習得から書類作成、提出までの本来業務以外の業務をなくし、建設業そのものの営業活動に集中していただけるようになります。

当事務所では、建設業の許可更新や各種変更、入札参加などの際に必要な手続きや対応について、継続的にフォローすることにより、お客様の建設業許可の維持と活用をサポートし、お客様の事業の安定と拡大を応援します。

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